【経営者が今から備えるべき3大テーマ】2025年から見た“2026年の加算・制度変更の見通し

2025年の介護請求は、
「審査の質が変わった」
と言われるほど、これまでと異なる流れを見せました。
- 科学的介護(LIFE)の提出“質”の厳格化
- 記録と計画書の整合性チェックの強化
- 加算要件の細分化
- 医療系書類の期限管理の徹底
- ケアプランデータ連携の普及
- 内部監査の重要性増加
といった変化により、2025年は“適切な運用ができている事業所”とそうでない事業所の差がもっとも顕著に表れた年でした。
そして2026年は、この流れがさらに明確になります。
2026年の制度を読み解く「3大テーマ」
2025年の審査・加算動向を総括すると、
2026年に向けて経営者が備えるべきテーマは次の3つに集約されます。
科学的介護(LIFE提出)の“完全運用フェーズ”に入る
2025年は、LIFE提出が
「提出しているか」から「内容が妥当か」へ
評価が変わった年でした。
2026年は、この傾向がさらに強まると予測されます。
LIFE提出の「精度」が審査の中心になる
2025年の審査で増えた指摘は次の通りです:
ADL評価の妥当性
- 記録とのズレ
- 評価の揺れ
- 状態変化反映の遅れ
計画書との整合性
- 計画書の目標とLIFE項目が一致していない
- 計画に必要な項目が不足
フィードバックの未反映
- モニタリングに利用できていない
- 計画書に改善点が取り込まれていない
成功事例:ADL評価の精度を組織で担保した通所介護
あるデイサービスでは、
ADL評価の揺れをなくすために次の施策を実施。
- 「ADL評価マニュアル」を作成
- 評価項目ごとの“OK例”“NG例”を写真付きで共有
- 新人研修でADL評価をロールプレイ
- 評価は必ず2名で実施(ダブルチェック制)
- 評価後、実施記録と照合し、矛盾があれば修正
これにより、LIFEと記録のズレが激減し、
科学的介護推進体制加算の算定が安定化。
2026年は、このような“組織的なLIFE品質管理”が標準とされる可能性が高い。
2026年に備えるLIFE運用の実務ポイント
- ADL評価の基準統一(必須)
- 計画書・記録・LIFEデータの同期化
- 状態変化時の即時再評価フロー
- フィードバック活用のルール化
- 提出前チェックリストの標準化
“加算要件の細分化・エビデンス重視”が進む
2025年は、加算要件の細分化が顕著でした。
その流れは2026年にも引き継がれると考えられます。
特に注目すべき加算は次の4つ。
機能訓練加算:評価・計画の精度向上が求められる
2025年に審査が厳しくなった理由:
- 訓練計画書の根拠不十分
- 記録との整合性不足
- LIFEデータと計画のズレ
成功事例:通所リハの仕組み化
ある通所リハでは、
機能訓練計画の作成を以下のように改善。
- 訓練目標は「行動」で定義(例:5m歩行→20m)
- 根拠となるADL記録を添付
- 訓練内容を“計画書の文言”に合わせる
- 毎月26日までにPDCAを行うルール化
結果、加算否認ゼロを達成。
入浴介助加算:観察記録・判断根拠の厳格化
2025年は入浴加算の返戻が急増しました。
理由:
- 入浴可否判断の根拠不足
- バイタルの欠落
- 観察記録の曖昧さ
成功事例:チェックリスト化したデイサービス
あるデイサービスでは、
入浴前後の観察項目をチェック式に。
- 皮膚状態
- 口腔状態
- バイタル
- 気分
- 歩行能力
これにより「抜け」がなくなり、
入浴加算の安定算定に成功。
口腔・栄養加算:多職種連携の“証跡”が求められる
歯科・栄養・看護との連携記録が不足し、
加算否認が増加。
例:
- 食事観察の記録不足
- 栄養ケア計画書の更新漏れ
- 医師への報告記録なし
2026年はこれらがより厳格化される。
科学的介護推進体制加算:研修・記録・ADLが評価対象に
2025年は研修記録の不足が指摘の主因でした。
2026年も:
- 研修内容
- 受講者
- 実施証跡
が審査の中心となる。
2026年に備える実務対応
- 加算要件×証跡の一覧化
- 月次チェックの文化化
- OJT含む研修証跡の保存
- 計画書の文言統一
- 実施記録の観察強化(曖昧表現禁止)
“データ連携と監査DX”が本格的な必須要件になる
2025年の大きな変化が
ケアプランデータ連携の普及と
内部監査の重要性の増大です。
2026年はこれが「必須」レベルになると予想されます。
ケアプランデータ連携の標準化
2025年は多くの事業所が以下の課題を抱えました:
- 提供票の反映漏れ
- 計画と実績のズレ
- ケアマネ変更の情報伝達遅れ
しかし、データ連携が進んでいる事業所では、
月末請求時間が40~60%削減されました。
成功事例(訪問介護)
データ連携を導入した事業所では:
- 予定自動取り込み
- 計画変更のリアルタイム通知
- 実績との突合自動化
これにより生活援助の返戻が激減。
内部監査の“月次化”は2026年の前提になる
2025年の返戻は多くが
「内部監査が月次化されていない」
ことが原因でした。
成功事例:月次監査で返戻ゼロの通所介護
- 記録
- 計画書
- 配置
- LIFE
- バイタル
- 入浴可否判断
- モニタリング
これらを毎月末にチェックすることで、
返戻ゼロを実現した事業所もあります。
2026年は“自動監査”がキーワードになる
審査・監査の基準が高度化するため、
紙や人の目だけでは限界があります。
必要なのは:
- 記録と計画の自動突合
- 加算要件の自動チェック
- 配置表の自動確認
- 指示書の期限アラート
- 提供票データの一元管理
これらは2026年に必要不可欠になる。
2026年に備えて今すぐ始めるべき具体策(サービス横断版)
記録の“統一ルール”を全サービスで導入する
- 曖昧表現禁止
- 目的→内容→結果の流れ
- 状態変化の定義統一
- テンプレートの一本化
モニタリングの抜けをゼロにする仕組み
- 月次日程固定
- 臨時モニタの必須化
- 電話記録も文字で残す
- 写真記録の活用
加算要件×証跡の一覧化
2025年に最も効果的だった改善策。
項目例:
| 加算名 | 要件 | 必須証跡 | 担当者 | チェック日 |
|---|
LIFE提出の品質管理(ダブルチェック制)
- ADL評価
- 記録との一致
- フィードバック反映
- 時間軸の整合性
⑤ 指示書・主治医連携の期限管理(訪看)
- 指示書一覧
- 更新期限の共有
- 医師ごとの連絡ルール
内部監査の月次化・DX化
2026年の返戻を防ぐ「最後の砦」。
■ 結論:2026年は“準備した事業所”だけが安定して加算を取れる年になる
2025年の返戻・指摘の傾向を見る限り、
2026年は次の3つが決定的に重要になります。
1. 科学的介護(LIFE)の品質管理
提出内容の妥当性・整合性がすべての加算の中心。
2. 加算要件の細分化に対応できる“証跡文化”
抽象的な記録ではなく、根拠のある記録が求められる。
3. データ連携と内部監査DXによる“整合性の自動担保”
2026年は“人の努力”ではなく“仕組み”が加算を守る。