【2025年道路交通法改正】法改正の先にある未来──移動のDX化と“安全で効率的な訪問体制”へ

法改正は“変化のきっかけ”
2025年の道路交通法改正は、多くの訪問介護・訪問看護事業所にとって「負担」や「対応義務」として捉えられがちです。
しかし本質的には、この変化は**“現場をより安全で効率的にするチャンス”**でもあります。
これまでの3回で解説してきたように、法改正は安全配慮の強化を求めるものであり、同時に業務の仕組みを見直す絶好の機会です。
ここからは、今後の介護・看護現場における**「移動のDX化」と「新しい安全体制の方向性」**を考えていきます。
自転車から「スマートモビリティ」へ
訪問業務における移動手段は、今後さらに多様化していきます。
近年では、電動アシスト付き自転車やシェアサイクルの導入が進み、職員の体力的負担を軽減する取り組みが広がっています。
また、一部の自治体では**「介護職員向けモビリティ導入補助金」**の活用も始まっています。
安全基準を満たした電動アシスト車や、GPS機能付き自転車を導入すれば、職員の安全確保と業務効率の両立が可能になります。
ポイント
- 自転車のGPS搭載による位置情報管理
- バッテリー残量・整備状況の自動通知
- 事故検知センサーやSOS送信機能の搭載
これらの技術を活用することで、「どこで・誰が・安全に移動しているか」をリアルタイムで可視化できるようになります。
「安全×効率」を両立する移動管理の仕組み
ICTを取り入れた移動管理は、単なる位置情報の把握だけでなく、業務全体の最適化にもつながります。
具体例
- 訪問ルートの自動最適化(移動時間を最大20〜30%短縮)
- 運転履歴の記録によるヒヤリハット共有
- 移動データと勤務記録を連携した労務管理
- AIによる「天候×移動リスク」自動アラート
これらを組み合わせることで、
「事故を防ぐ」「効率を高める」「職員を守る」仕組みをデータで支える組織へと変わっていけます。
安全文化のDX──データが育てる“予防型”の職場
これまでの安全対策は「経験と注意」に頼る部分が大きくありました。
しかし、DXの力を借りれば、安全管理を**“人任せ”から“仕組み任せ”へ**と変えられます。
例えば、
- 定期点検のリマインドをシステムが自動通知
- 事故・違反発生時に管理者へ即時アラート
- 職員ごとの安全スコアを可視化して改善指導
といったデータ主導の管理が可能になります。
安全管理のDX化は、職員の安心感を高めるだけでなく、離職防止や採用力の向上にもつながります。
「安全に働ける事業所」は、求職者や家族から選ばれるブランドになります。
未来の“移動支援”はチーム連携で進化する
今後は、移動データとケアデータを連携させることで、
「ケアの質」と「業務効率」を同時に高める時代が到来します。
LIFE(科学的介護情報システム)や介護DXの流れの中で、
「どの職員がどこでどんなケアを提供しているか」という情報を安全に共有する仕組みが整いつつあります。
未来像
- 移動データ+LIFEデータで“ケアの見える化”
- PHR(Personal Health Record)との連携による安全・健康管理
- AIが訪問ルートや勤務計画を自動提案
これらの取り組みはすでに一部自治体や大手介護事業者で始まっています。
移動のDX化は、もはや未来の話ではなく、現場がすぐに始められる変革です。
経営者に求められる視点──「安全」を経営戦略に
法改正は“義務”ですが、安全体制の強化とDXの導入は“経営戦略”です。
安全対策への投資は、事故リスクを減らすだけでなく、
長期的には「職員定着率」「顧客満足度」「行政評価」のすべてを高めます。
いま求められるのは、安全と効率を両立する新しい経営判断。
それは、ヘルメットや反射材だけでなく、データ・ICT・DXの力を使って現場を支えること。
2025年の法改正をきっかけに、
訪問介護・訪問看護の移動は「危険な作業」から「安全でスマートな業務」へと進化していくでしょう。
まとめ
- 法改正は“縛り”ではなく“変革のチャンス”
- 移動のDX化で安全・効率・信頼を同時に高められる
- 経営者の一歩が、職員と利用者の未来を守る
「安全で働ける介護・看護現場」を実現することが、
これからの地域ケアの信頼を支える最大の力になります。



